AI(人工知能)はどこまで進化するのか?

AIが作曲の世界にも登場

ここまで見てくると、AIは既にレンブラントの絵を完璧に真似た肖像画を描く力を身につけるだけでなく、そこから一歩を踏み出し始めている。少なくとも、このレベルにまで到達している画家(贋作家も含めて)はそう多くはいない筈である。

一方、問題はこれから先である。本当に、AIが学びとったことから「離」れて、独自の境地に達することが出来るのだろうか?そのことを考えるために、今度は音楽、それも作曲の世界を見てみたい。実は、この世界でも、AIは確実に実力をつけていた。

下の図は、AIの作曲したバロック風の音楽の楽譜である。YouTubeでこの曲を聴くことが出来る。
「バッハの作曲を学習したAIをあなたは見抜けるか?」、という挑戦的なキャッチがついている。

AI(人工知能)はどこまで進化するのか?

AIが作曲したバロック風音楽の楽譜(“GIMMODO”より)

筆者も実際にこの音楽を聴いてみたが、小生の音楽鑑賞のレベルでは、これがAIが作曲したバロック音楽とは思いつきもしなかった。正に、見事なバロック風音楽である。

実は、作曲にはいくつかの厳密なルールがある。「和音」「拍子」「ソナタ形式」などがその一部である。AIにとって、ルールが多ければ多いほどやり易いし、対応がし易いのである。
作曲の世界では、楽譜というディジタルな記号が膨大に残されている。そのため、ルールの中で楽譜を自由に変えることによって、意外と簡単に独創性を出すことが出来るようなのだ。

「クローズアップ現代」では、AIによる作曲に関して面白いエピソードを紹介している。
カリフォルニア大学でAIによる作曲の研究に携わっているデビッド・コープ教授の経験談である。
それは、作曲したのがAIであることを事前に知らせていた場合と、その逆の場合の聴取者の反応が全く逆になったというのだ。AIが作った曲だと知っている場合は、冷たい評価にしかならないという。人間は、「AIに、芸術の世界にまで侵入してほしくない」、というのが本音なのだろう。

一方、この番組では興味深い予言がなされていた。それは、「視聴者や読者などの感情的な反応をディジタル化し、それをAIに学習させれば、人間の感動を呼ぶ芸術作品が創作出来るようになるはずである」、というものであった。

芸術の世界では、AIが「破」のレベルから「離」の世界へと脱皮を果たそうとしている。

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