サーカスの思い出
空に囀ずる鳥の声 峯より落つる滝の音(「美しき天然」竹島羽衣作詞、田中穂積作曲)サーカス小屋から聞こえてくる音楽が70年近く昔を思い出させる。
テントの中に設えられた空中ブランコや会場内を沸かせるピエロ。赤や青や黄色い光の渦と喧騒が脳裏をよぎる。
湘南モノレールの湘南深沢駅のそばにPOPサーカスが小屋をかけたのは平成最後の4月末から令和元年の6月にかけてだった。
モノレールの大船駅では「お帰りの時間」が混雑することを予告して注意を呼び掛けている。サーカス小屋の入り口が混雑するのは昔から決まっている。
サーカスという言葉を聞くと「人さらいに連れて行かれる」と言われたの幼かった日を思い出す。
誰に連れていって貰ったのか記憶はない。戦後も早い時期の福岡県大牟田市は石炭不況の前で荒くれた雰囲気の町だった。
父は12人兄弟で育ち参謀本部を辞めた後に祖父の仕事を手伝っていた時期だ。空襲に遭ったのだが仕事柄なのか住まいが山の上から駅前に移転したことを覚えている。サーカスのことを考えていると今にも祖父母の声が聞こえて来そうだ。
あれから幾星霜、あらかたの叔父や叔母たちも亡くなって「山の上」と呼んでいた本家の家屋敷は掘り下げられてマンションになり今は跡形もない。
「美しき天然」のメロディーと一緒に幼かった日々が甦ってくるような気がする。