AI(人工知能)はどこまで進化するのか?

NHK「クローズアップ現代」が報じたAIの“限界”

実は、筆者は見逃していたが、AIがいよいよ芸術の分野にまで乗り出してきたことを、NHKがテレビ番組「クローズアップ現代」で既に報道していたのである。
昨2017年8月20日に放映された「進化する人口知能 ついに芸術まで!?」という番組である。

この番組をYouTube で観てみた。まず紹介されていたのが、レンブラントの画風に倣った肖像画をAIに描かせるというプロジェクトの進行であった。AIに300枚ものレンブラントの絵を深層学習させ、「白人」、「男性」、「髭あり」、「服装」など9つほどのテーマを与えると、AIがレンブラント風の肖像画を制作するというものである。下の写真がこのプロジェクトによって描かれた肖像画である。

AI(人工知能)はどこまで進化するのか?

AIが描いたレンブラント風肖像画(「PCWorld」より)

正に、正統な肖像画である。実際にレンブラントが描いたものではないが、限りなくレンブラントに近い絵である。この絵を箱根の美術館に来られた方々に見て貰った結果をが例示してみよう。
「素晴らしい!」、「AIが描いたとは思えない」、「本物だと思って、だまされてしまう」、などである。

一方、番組に出演していた美術評論家の方の感想は、「見事なまでの贋作(がんさく)ですね!」、と言って、バッサリと切り捨てたのである。AIが描いた絵は、あくまでもレンブラントの真似であり、創造性がまったくないというのだ。この絵が贋作と判定されるのであれば、絵に価値は全くない。

レンブラントの筆使いを学ぶのはよいのだが、そこから「自分らしさ」「独特の感覚」を創造するのが芸術なのだという。AIは、完璧にレンブラントを学んでいるが、そこから一歩も出ていないところを突かれたのだ。皮肉なことに、AIの完全性、完璧性が芸術と贋作の分かれ目となったのだ。

この番組では、「人間はAIやコンピュータと違って、完璧には覚えられないし、忘れたり、欠けたりする。そこが、その人間の独自性や創造性になっていく」とも解説をしていた。
それでは、ここで、前のページのレンブラント風の肖像画をもう一度ご覧になって頂きたい。

この肖像画は、一見するとレンブラント風だが、レンブラントの真似ではなく、抽象画風なタッチで描かれている。風貌はぼんやりしており、余白を大胆に設けている。実は、ここにAIの進化を見てとることが出来るのである。1万5千点もの肖像画から深層学習で学んだ筆使いをそのまま忠実に再現するのではなく、あえて、手を抜いたり、中途半端に描き込んだのである。

芸事を学ぶ時の基本は、「修(守)・破・離」の段階を経ることだという。
AIは徹底して手本を「修得」する段階をへて、現在は、それを「破る」段階に至ったのだ。

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